肌のお手入れを丁寧に行おうとするあまり、ケアの回数を増やしてしまう方がいます。
「朝・昼・夜とこまめにケアした方が肌に良いのでは」と考えて、1日3回のスキンケアを実践している方もいるかもしれません。
しかし、回数を増やせば増やすほど効果が高まるというわけではなく、かえって肌に負担をかけている可能性もあります。
一般的には朝晩の2回が基本とされていますが、3回目を追加することで何か問題が起こるのでしょうか。
肌質や生活環境によっては、複数回のスキンケアが必要になる場合もあるかもしれません。
本記事では、スキンケアを1日3回行うことの是非について、適切な頻度や注意点とともに詳しく解説していきます。
スキンケアを1日3回行うのは多すぎるの?
スキンケアを1日3回行うのは、基本的には多すぎる頻度であり、通常は朝晩の2回で十分です。
肌のお手入れは「やればやるほど良い」というものではありません。肌には本来、自ら水分や油分のバランスを整える力があり、過度なケアはその自己調整機能を低下させる可能性があります。
1日2回のスキンケアが推奨される理由は、肌のリズムに合っているためです。朝は、寝ている間に分泌された皮脂や汗を落とし、日中の外部刺激から肌を守る準備をします。夜は、一日の汚れやメイクを落とし、睡眠中の肌の回復をサポートします。この2回で、肌のサイクルに沿ったケアが完結します。
1日3回スキンケアを行うということは、この基本のサイクルに加えて、日中にもう1回ケアを追加することになります。しかし、日中の追加ケアは、必ずしも肌にとってプラスになるとは限りません。
特に問題となるのは、洗顔の回数です。洗顔は、汚れとともに肌に必要な皮脂も取り除いてしまいます。1日に3回洗顔すると、肌が乾燥しやすくなり、かえって皮脂の過剰分泌を招くこともあります。肌が「乾燥している」と感じると、それを補おうとして皮脂を多く分泌するという反応が起こるのです。
また、化粧品を塗る際の摩擦も、回数が増えればその分肌への負担になります。1日に何度も肌を触ることで、バリア機能が低下したり、刺激に敏感になったりすることがあります。
さらに、化粧品に含まれる成分に肌が触れる回数も増えます。通常は問題ない成分でも、頻繁に触れることで刺激を感じやすくなることがあります。特に敏感肌の方は、ケアの回数を増やすことでトラブルが起こりやすくなる可能性があります。
ただし、すべての場合において1日3回がNGというわけではありません。特殊な状況や肌の状態によっては、日中のケアが必要になることもあります。重要なのは、やみくもに回数を増やすのではなく、自分の肌に必要なケアを見極めることです。
1日3回のスキンケアは一般的には多すぎる頻度であり、基本の朝晩2回を丁寧に行う方が、肌にとって健康的で効果的です。
では、どのような場合に1日3回のケアが必要になるのでしょうか。
1日3回のスキンケアが必要になるケース
基本的には1日2回で十分ですが、特定の状況では1日3回のケアが有効な場合もあります。
すべての人に1日3回が必要というわけではなく、限られた状況や目的がある場合に限って検討すべきものです。自分の状況に当てはまるかを確認してみましょう。
まず、運動やスポーツをして汗をかいた場合です。ジムでのトレーニングやランニングなど、日中に運動をして大量の汗をかいた後は、そのままにしておくと肌トラブルの原因になります。この場合、軽く洗顔して汗を流し、簡単な保湿をすることは有効です。ただし、ゴシゴシ洗うのではなく、ぬるま湯で軽く流す程度で十分です。
次に、極度に乾燥した環境にいる場合です。エアコンの効いた室内に長時間いたり、冬場の極度に乾燥した日などは、朝のスキンケアだけでは保湿が夕方まで持たないこともあります。このような時は、昼に化粧水スプレーやミストで軽く保湿を補うことが効果的です。ただし、本格的な洗顔と保湿をする必要はなく、簡単な保湿補給で十分です。
また、メイクを落として再度メイクをする必要がある場合も、3回目のケアが必要になります。例えば、仕事終わりに予定があり、メイクを一度落として付け直す場合などです。この場合は、クレンジング・洗顔・保湿・メイクという一連のプロセスを行うことになります。
夜勤や不規則な生活をしている方も、1日3回のケアが必要になることがあります。例えば、夜勤明けに朝帰宅して寝る前、起きた後、そして夜にまた出勤する前、というように生活リズムが一般的でない場合は、それに合わせてスキンケアの回数を調整する必要があります。
皮膚科での治療を受けている場合も、医師の指示により1日3回のケアが必要になることがあります。特定の薬を1日3回塗布するように指示されている場合などは、それに従ってケアを行います。
ただし、これらのケースでも、3回目のケアは「本格的な洗顔と保湿」ではなく、「軽い洗顔または保湿の補給」程度にとどめることが重要です。毎回フルコースのスキンケアを行うと、肌への負担が大きくなります。
また、1日3回が一時的に必要な場合と、継続的に必要な場合は区別すべきです。運動後のケアなど一時的なものであれば問題ありませんが、毎日継続して1日3回のフルケアをするのは避けるべきです。
1日3回のスキンケアが必要になるのは、運動後、極度の乾燥環境、メイク直し、不規則な生活など特定の状況に限られ、多くの場合は簡易的なケアで十分です。
それでは、1日3回行う場合の正しい方法を見ていきましょう。
1日3回スキンケアする際の正しい方法と注意点
やむを得ず1日3回スキンケアをする場合は、肌への負担を最小限にする工夫が必要です。
単純に朝晩のケアをもう1回繰り返すのではなく、3回目のケアは軽めにすることが重要です。肌に必要以上の負担をかけないための方法を理解しておきましょう。
3回目のケアで何をすべきか
3回目のスキンケアは、本格的なケアではなく、必要最小限のケアにとどめることが基本です。
運動後など、汗をかいた場合は、まずぬるま湯で顔を軽く洗い流します。この時、洗顔料を使う必要は必ずしもありません。ぬるま湯だけで汗や軽い汚れは十分に落とせます。どうしても洗顔料を使いたい場合は、マイルドなタイプを選び、泡立ててから優しく洗いましょう。
洗顔後は、化粧水で軽く保湿します。朝晩のように何度も重ね付けする必要はなく、さっと一度塗る程度で十分です。化粧水の量も、通常の半分程度で構いません。
乳液やクリームに関しては、3回目のケアでは省略することも検討しましょう。特にオイリー肌の方や夏場は、化粧水だけで終わらせても問題ありません。乾燥が気になる場合のみ、薄く乳液を塗る程度にします。
日中の保湿補給が目的の場合は、さらにシンプルにできます。洗顔はせず、化粧水スプレーやミストを顔に吹きかけるだけでも効果的です。メイクをしている場合は、メイクの上から使えるミストを選びましょう。
メイク直しのために一度クレンジングをする場合は、通常のクレンジング・洗顔・保湿の流れを行います。ただし、この場合も洗顔は優しく行い、保湿も必要最小限にとどめることを意識しましょう。
重要なのは、3回目のケアを「簡易版」として位置づけることです。朝晩のケアと同じレベルのフルケアを3回行うと、肌への負担が大きすぎます。
肌に負担をかけない工夫
1日3回スキンケアを行う際は、肌への刺激を最小限にする配慮が必要です。
まず、洗顔の強度を調整しましょう。3回目の洗顔は、1回目・2回目よりも軽めに行います。ゴシゴシこすらず、さっと洗う程度で十分です。洗顔時間も短めにし、30秒程度で終わらせます。
化粧品を塗る際の摩擦にも注意が必要です。何度も肌を触ることになるため、できるだけ優しく、手早くケアを終わらせることを心がけましょう。強く叩いたり、こすったりせず、押さえるように塗布します。
また、3回目のケアでは、シンプルな成分の化粧品を選ぶことも有効です。美容成分がたくさん入った高機能なものよりも、保湿成分だけのシンプルなものの方が、肌への刺激が少なくなります。
タオルの使い方にも配慮しましょう。1日に何度も顔を拭くことになるため、清潔なタオルを使い、ゴシゴシこすらず押さえるように水気を取ります。
肌の様子を観察することも大切です。1日3回のケアを始めてから、肌が赤くなったり、かゆみが出たり、乾燥が悪化したりした場合は、すぐに回数を減らすか、方法を見直しましょう。
また、1日3回のケアは、必要な期間だけに限定することをおすすめします。一時的に必要な状況が終わったら、すぐに1日2回に戻しましょう。継続的に1日3回が必要だと感じる場合は、そもそもスキンケアの方法や使っている化粧品が合っていない可能性もあります。
1日3回スキンケアする場合は、3回目を簡易的なケアにとどめ、肌への摩擦や刺激を最小限にすることで、負担を軽減できます。
しかし、いくら工夫しても、やりすぎは肌トラブルにつながることがあります。
スキンケアのやりすぎで起こる肌トラブル
スキンケアの回数を増やしすぎると、様々な肌トラブルを引き起こす可能性があります。
「肌のために」と思って行っているケアが、実は肌にダメージを与えていることもあります。やりすぎによって起こるトラブルを知っておくことで、適切なケアの頻度を判断できるでしょう。
最も起こりやすいのは、乾燥の悪化です。洗顔を繰り返すことで、肌に必要な皮脂や天然保湿因子(NMF)まで洗い流してしまいます。その結果、肌のバリア機能が低下し、水分が蒸発しやすくなります。肌がカサカサする、つっぱる、粉を吹くなどの症状が出たら、ケアのやりすぎが原因かもしれません。
次に、逆に皮脂が過剰に分泌されることもあります。肌が乾燥を感じると、それを補おうとして皮脂を多く分泌します。「べたつくから」と洗顔の回数を増やすと、さらに皮脂が増えるという悪循環に陥ることがあります。Tゾーンのテカリや毛穴の目立ちが悪化した場合は、要注意です。
敏感肌になることもあります。頻繁にスキンケアを行うことで、肌のバリア機能が低下し、外部刺激に対して敏感になります。今まで使えていた化粧品で刺激を感じたり、赤みやかゆみが出やすくなったりします。
ニキビや吹き出物が増えることもあります。過度な洗顔や保湿により、毛穴が詰まりやすくなったり、肌のバランスが崩れたりして、ニキビができやすくなります。特に、油分の多い化粧品を1日に何度も塗ることは、毛穴の詰まりを招きます。
肌のターンオーバーが乱れることもあります。過度なケアは、肌の自然な新陳代謝のリズムを狂わせます。その結果、古い角質が溜まりやすくなったり、逆に角質が薄くなりすぎたりします。肌のくすみやゴワつきが気になる場合は、ケアのやりすぎを疑ってみましょう。
また、化粧品かぶれを起こすリスクも高まります。1日に何度も化粧品を使うことで、特定の成分に対するアレルギー反応が起こりやすくなることがあります。突然、今まで使っていた化粧品が合わなくなった場合は、使用頻度を見直してみましょう。
さらに、肌の自己回復力が低下することもあります。過保護にケアしすぎると、肌が本来持っている自己調整機能が弱まってしまいます。化粧品に頼らないと肌の調子が保てない、という状態になることもあります。
経済的な負担も無視できません。スキンケアの回数が増えれば、化粧品の消費量も増え、費用がかさみます。また、肌トラブルが起きれば、それを治すための化粧品や治療費も必要になります。
スキンケアのやりすぎは、乾燥、皮脂過剰、敏感肌、ニキビなど様々なトラブルを引き起こす可能性があり、肌の自己回復力の低下にもつながります。
では、自分にとって適切なケアの頻度は、どのように判断すれば良いのでしょうか。
自分に合ったスキンケアの頻度の見極め方
スキンケアの適切な頻度は、一人ひとりの肌質や生活環境によって異なります。
多くの場合、1日2回(朝晩)が最適ですが、自分の肌の状態を観察しながら、本当に必要な頻度を見極めることが大切です。以下のポイントを参考に、自分に合った頻度を判断しましょう。
まず、肌の状態を毎日観察する習慣をつけましょう。鏡で肌を見る際、乾燥やべたつき、赤み、ニキビなどの変化に注意します。スキンケアの回数を変えた後、肌の調子が良くなったか悪くなったかを確認します。
肌が健康な状態のサインは、以下の通りです。適度なしっとり感がある、つっぱりやべたつきがない、メイクのノリが良い、肌トラブルが少ない、肌に透明感がある、などです。これらの状態が保てている場合は、現在の頻度が適切と言えます。
逆に、以下のような症状が出た場合は、スキンケアのやりすぎの可能性があります。洗顔後すぐに肌がつっぱる、化粧水をつけてもすぐに乾燥する、日中の皮脂が増えた、ニキビや吹き出物が増えた、肌が赤くなったりヒリヒリしたりする、化粧品が染みるようになった、などです。これらの症状がある場合は、ケアの回数を減らすか、方法を見直しましょう。
季節による調整も重要です。夏場は皮脂が多く汗もかきやすいため、場合によっては日中の軽い洗顔が有効なこともあります。一方、冬場は乾燥しやすいため、洗顔回数を減らし、保湿を重視する方が良いでしょう。
生活環境も考慮すべき要素です。エアコンの効いたオフィスで一日中過ごす方は、日中の保湿補給が必要かもしれません。一方、在宅勤務で刺激の少ない環境にいる方は、シンプルなケアで十分なこともあります。
年齢による変化も意識しましょう。若い頃は皮脂が多く、シンプルなケアで十分だった方も、加齢とともにより丁寧な保湿が必要になることがあります。ただし、回数を増やすのではなく、1回のケアの質を高めることが重要です。
また、「最小限のケアで最大限の効果」を目指すことをおすすめします。回数を増やすよりも、朝晩2回のケアを丁寧に行い、自分に合った化粧品を使う方が効果的です。
判断に迷った時は、まず1週間ほど1日2回のケアに徹してみましょう。それで肌の調子が良ければ、2回が適切な頻度です。どうしても日中のケアが必要だと感じる場合は、洗顔はせず、化粧水スプレーで軽く保湿する程度から始めてみましょう。
微妙な判断が必要な場合や、肌トラブルが続く場合は、ご相談ください。
自分に合ったスキンケアの頻度は、肌の状態を観察し、季節や環境に応じて柔軟に調整することで見極められ、多くの場合は1日2回が最適です。





